Quantum Sensing

ナノダイヤ班

nanodiamond image setup setup2 charge responsiveness

近年、生体適合性を持つダイヤモンドの中でも特にダイヤモンド中のNVセンターのバイオ分野への応用に注目が集まっている。NVセンターとは窒素(N)と原子空孔(V)からなる格子欠陥で、3つの荷電状態(NV+/NV0/NV-)をとり、荷電状態に応じて異なる色の蛍光を示すことが知られている。このNVセンターを含有するナノ粒子である蛍光ナノダイヤモンドを用いることで、局所的な計測への活用が期待できる。また、蛍光が室温や溶液中において褪色、明滅しないことから蛍光標識材として優位であり、電子スピンのコヒーレンス時間が長いことからNV-を用いた量子計測への応用が盛んに行われているが、表面近傍のNVセンターは表面欠陥や吸着物などの周囲の影響を受けやすく荷電状態が不安定であることから電荷安定性の向上が求められている。

私たちは、この荷電状態が不安定であることを積極的に活かすことで外部環境の変化に応答する局所センサーとして機能し得ると考え、電気化学セルを用いて実際に印加した方形波電圧に対し、荷電状態が変化したことを当研究室が所有する共焦点レーザー走査型顕微鏡で確認することに成功した。0.1~2Vの振幅の電圧に応答すること、また、この電位変化に対して応答するNVセンターの割合や応答感度についてナノダイヤモンド表面の終端や粒径、直流バイアスの重畳によりこれらがどのように変化するかを調査した。

現在、私たちはナノダイヤモンド中のNVセンターにおいて荷電状態が変化するメカニズムについて調査中である。電位変化に対してどのように荷電状態が変化しているかの詳細な説明が可能になれば、電子スピン操作・計測における電荷安定性の向上に寄与でき、磁場や電場、温度をナノスケールで計測できるナノ量子センサーとして蛍光ナノダイヤモンドが機能すると考えられる。